午前7時29分、自宅前発バスで南武線へ。分倍河原・京王線乗り換え。高尾駅・中央本線乗り換え。併走する中央高速道路の裏側を見上げながら、午前9時45分、猿橋駅着。駅から出ると、人影も無く静かな自然が目に飛び込んでくる。リュックのひもを締め直し、出発。駅前の道路を渡り、橋を越える。何気なく下を見おろすと...2~30メートル下に素晴らしい渓谷が広がっている。ジュンさんが見たら、渓流竿を片手にすっ飛んでいきそうな絶景に暫し見とれる。気を取り直して、遙か彼方にそびえる目的の千メートル越え「百蔵山・モモクラヤマ」に向かって歩き始める。
登山口までの約2キロはバスで行きたかったが、平日は午後発の便しかない。最近は自宅への乗り換え駅から4キロ弱を、歩いて帰るようにしているので、たかが2キロ...と甘く見たのが大間違いの始まり。猿橋駅と百蔵山の登山口は約 220メートルの標高差がある。当然超初心者にはキツメの長い登り坂が、駅からダラダラと果てしなく続く。しかもアスファルト道路なので余計足に響く。予定外の暑さと急坂に息を切らし、大汗かいて登山口へ到着した時点で笑顔は出るが体は自分の物では無い感覚が...。5分ほど休憩し、予定の東ルート登山道を選択。
何が何でも登り切らなければ、と前へ進む。この時、標高545メートル。残るは458メートル。町の道路なら5分もかからないのに、急な山道はそうはさせてくれない。喘ぎ喘ぎ、心臓がバクバクし始めると3~4分休憩し登り続ける。俺はここで死ぬのかなと思い始めた頃、登り始めた時は上に見えていた周りの山々が、いつの間にか下に見えるようになっている事を美しいパートナーが発見。ヤッタッ!ヤリーッ!頂上はそこだ!!
しかしその時、夢を打ち砕くように、ロープの張られた急坂が目の前に出現。高所恐怖持ちのパートナーを先に行かせ、パートナーの万一の落下に備えながら時折ロープに捉まり登り続ける。日頃ボルダリングで腕を上げているパートナーも、流石に休んでは登り、休んでは登りを繰り返す。そして!!先行のパートナーが叫ぶ。「あそこが頂上だよォーーー!」。登山口から1時間20分。ジャスト標準タイム(ガイドブックによる)で上ってこられた。ここまで来るのに、4~5回は死んで、蘇生し、を繰り返したような気がする。
頂上でコンビニおにぎりを食べ、周囲の絶景に浸る時、ヤマの魅力に取り憑かれてしまう人々の気持ちが分かるような気がした。1003メートルの頂上で十分休憩し、上ってきた時とは反対側の西ルートから下山を開始。後で地元の方に聞いて知ったことだが、東ルートは初級者にはカナリきついだろうとのこと。それだけに、帰りはまるで天国の修学旅行。道ばたに咲くリンドウの紫や、まむし草の赤い実(毒注意)に感動しながら登山口へ帰還。
ここで事件勃発。先回の高尾縦走でチョット痛めた膝の痛みが、突然激しくなる。パートナーと相談の上徒歩を断念。4時台のバスが1便だけある筈だったが、シーズンオフで走ってないとのことで急遽タクシーを呼ぶことに。悔しいが次回の登山を考え、海で学んだ「退く勇気」だと自分に言い聞かせる。タクシーの運転手さんは優しい方で、帰りの道すがら観光案内をして下さる。
途中の日本3大奇橋と言われる「猿橋」と、絶景の大渓谷を堪能。猿橋駅の近くに一軒だけあったお菓子屋さんで、猿橋饅頭と味噌煎餅を購入。高尾行きの帰りの電車の中で、おいしく頂きました。次回は年納めの「優しい山登り」を近場で行う予定です。